※こちらの作品は15禁ですので義務教育未終了の方は観覧をお控え下さい。
 
 
 
 
 
 彼、雲雀恭弥はああ見えて結構溜め込むタイプである。もちろん他人に対する事では溜め込まない。気を使ったりなどは皆無、その場で言いたい事は言うし、己(秩序)に背く者には容赦なく制裁を加える。
 そんな気丈な彼が溜め込むのは、自分自身の事である。自己嫌悪で溜め込むのだ。
 彼は一定の周期で溜め込んでいたものを吐き出す。それを僕は爆発期と密かに呼んでいる。そして今、雲雀恭弥は十回目の爆発期真っ只中である。
 
「もうやだ……」
 
 爆発期は一年に一回巡ってくる。爆発期とは言えども、手当たり次第に物を投げたりだとか、目についた奴に重傷を負わせたりだとか、そういう類のものではない。そういった意味では爆発期の彼より、普段の彼の方がよっぽど手懐けられないじゃじゃ馬だろう。
 なんて事はない。爆発期の彼は、とことんネガティブで、とことん甘えん坊になり、ただ僕に一日中引っ付いているだけだ。普段は絶対に見せない態度で、小さくなって、甘えてくるのだ。どうやら彼は、恋愛に対する普段の自分の態度に鬱憤を溜めているらしい。そんな彼が僕は大好きだ。
 頭を撫でても暴言を吐かないし、キスをしても咬みつかれない。彼からセックスに誘ってくれるし、甘い言葉を囁いても部屋から追い出されない。
 胸元にしがみついている恭弥は、頭を撫でる僕の手に、擦り付けるようにして頭突きする。
 
「全部忘れられたらいいのに」
「……そうですね」
 
 全部というのは、きっと僕の事も含まれいるのだろう。曖昧に返事をすると、恭弥は僕を床に押し倒した。頭を打ったのが畳だったからまだしも、フローリングだったら後頭部に見事なタンコブができていただろう。
 恭弥は僕を押し倒した後、紅潮した表情で僕のベルトに手をかけた。するするとベルトを外し、ジッパーを下ろしにかかる。僕は打ち付けた後頭部をさすりながら、上体を起こしてそれを見ていた。
 
「左足、膝立てないでよ。邪魔」
「立てた方がいいじゃないですか」
「今更体裁なんか気にしてるの?」
 
 これからする事、わかってる癖に。そう付け加えて恭弥は僕のそれに手を添えた。空気の読めない鹿威しが無音だった部屋に音を響かせる。しかし彼はそんな事はお構い無しに、何度か上下に動かした後、口腔へと招き入れた。
 生暖かい感触は好きだ、生々しいこの行為を象徴しているようで。
 背筋を走る快楽を紛らわす為、彼の髪を指で梳く。それに反応して彼が声を漏らす。屈んだ所為で大きく開いた胸元に目を奪われ、しかと見とれていると、じれたらしい彼が歯を立てた。
 
「集中してよ」
 
 口元を拭う彼。浴衣の袖から覗く白く折れてしまいそうな腕も官能的に見える
 
「君に見とれていたんですよ?」
「……気持ち良くないなら止める」
「気持ち良いから紛らわしていたんです」
 
 言葉を詰まらせた彼は再び奉仕作業に戻った。見返したいのだろう、一生懸命に動く彼は可愛らしくもあり、刺激的だった。思わず声を漏らすと、彼は一瞬僕に目を遣る。その目の奥に、勝ち誇った笑みを浮かべた彼がいたような気がした。しかしそれは快楽に浸食されていく内に消えていってしまった。
 時間が経つに連れ、恭弥は恍惚した目で僕に上目遣いをするようになる。快感とは別に、心臓が一際大きく跳ねる。魔力でもあるんじゃないかと疑いたくなった。
 
「出しま、すよ」
「んっ……」
 
 最後、恭弥が強く吸い上げ、僕は高潮に達した。彼はオーガズムに達した証拠でもあるそれを、一滴残さず飲み込んだ。
 決して美味しいものではないと言うのに、制止をかけてもいつも飲み込むのだ。僕も恭弥のだったら、と思うが彼も同じ気持ちなのだろうか。恒常的にそうだとしたら嬉しい事この上ないのだが。
 双方共に息が上がり、ただ見つめ合う。僕は達した後に来る特有の無気力感というか虚無感というかに襲われていたが、お礼の意味合いも込め、彼を抱き締めた。腕の中の彼はとても小さく思えた。
 
「もっと勉強する」
「誰と?」
「ばか。君しかいないでしょ」
「クフフ……嬉しいですねぇ」
 
 今度は僕が彼をそっと押し倒す。彼はそれを予感していたように身を委ねる。
 
「ねぇ、忘れさせてよ……」
 
 酔いが冷めていないような、陶酔しきっている目で恭弥は懇願する。
 僕に求めるなんて間違っている。そのセリフを吐く相手は、赤の他人だとか、対して関わっていない人間だ。本人は気付いていないだけで、彼に好意を寄せている人間など嫌になるくらいいるというのに、それでも彼は僕を選んでくれる。
 だから僕は掻き抱いた。彼が求めるより激しく、必要以上に。なにより彼が僕を必要としてくれている事が嬉しかったし、それは同時に本能までも刺激した。
 掠れた声で喘ぐ彼を前に、狂ってしまえばいいと、壊れてしまえばいいと思いながら腰を打ち付けた。今更体裁なんて気にならなくなっていた。
 
「全部忘れられたら、幸せになれるかな」
「恭弥は僕の事を忘れて、幸せになれるんですか?」
 
 させませんよ。
 そう言うと、恭弥は何度も頷いた。せり上がる快感を確かめるかのように、また逃がすかのように、僕の背に刺さる爪に力が込められていく。
 徐々に、しかし確実に恭弥を高みへと誘う。
 夜は深さを増し、やがて白んでいく。
 
 
 
 明け方、僕は一人目が覚めた。
 隣で眠る恭弥はらしくなく、すぴすぴと寝息を立てて眠っている。微笑ましい光景につい声を上げて笑うと、恭弥はうんうん唸って、反対側を向いてしまった。
 かれこれ十年、付き合ってきた。僕も恭弥も二十五歳。結婚も考えていないわけではない。
 
「結婚して下さい」
 
 恭弥の後頭部に呟いた言葉は、空気と融解していった。
 その言葉とポケットに入っているリングは彼の爆発期ならぬ発情期が終わるまで、とっておこうと思う。
 
end.
 
15禁解禁祝い!
エロシーンが書きたかっただけです、ごめんなさい。